るんですよ。」
「え! 本当かね、それは。」
「そうです。そいつを見つけるのはあなたの役です。しかし僕は思ったより以上に調べを進めました。それで奴らも本気になって仕事をし出したらしいのです。僕のまわりにも危険が迫ってきました。」
「そんな……ボートルレ君。」
「いえ、とにかくそれよりも先に、あのいつか血染の襟巻と一緒に拾った紙切のことですが、あのことは誰にも話してはいらっしゃらないでしょうね。」
「いや、誰にも、しかしあんな紙切が何か役に立つのですか?」
「え、大いに大切なのです。僕はあれに書いてあった暗号の謎を少し解くことが出来ました。それについて申し上げますが。」
と、いいかけたボートルレは、ふいにその手で判事の手を押えて聞き耳を立てた。
「誰か立ち聞きをしている。」砂利を踏む音に少年は窓に走った。しかし誰もいない。
「ねえ、判事さん、敵はもうこそこそ仕事をしてはいません。大急ぎで申し上げましょう。」
 少年は紙切を卓《テーブル》の上において説明を始めた。ボートルレはこの間からこの紙切について一生懸命考えていたのであった。そして少年はやっとその数字がア・エ、イ・オ、ウ、の字を表《あ
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