ら》わしていることを考えついた。つまり数字の1は、最初のア、を差し、2は次のエを指しているのであった。それを頼りに、点のところへ、言葉になりそうな字を入れていった。その結果少年は、第二行から(令嬢《ド・モアゼル》)という言葉を拾うことが出来た。
「なるほど、二人の令嬢のことだね」と判事はいった。少年はまたその他に、(|空に《クリューズ》)という言葉と(針《エイギュイユ》)という言葉を見つけた。
「空《うつろ》の針、それは何だろう。」と判事がいった。
「それは僕にもまだ分りません。しかしこの紙切の紙はずっと昔のものらしいのですが、それが不思議です。」
この時ボートルレはふと黙った。判事の書記が入ってきたのであった。書記は検事総長が到着したと告げた。判事は不思議な顔をした。
「何だろう、おかしいな。」
「ちょっと、下までおいで下さいといって、馬車をまだお降りになりません。」
判事は首をかたむけながら降りていった。この時怪しの書記は室《へや》の中から戸を閉じて鍵を掛けた。
美少年の重傷
「あ!なぜ戸を閉めるんです!」とボートルレは叫んだ。
「こうすれば話がしい
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