めつつ胸の慄《ふる》えるのを覚えた。アルセーヌ・ルパンはあそこにいる。有名な巨盗《きょとう》ルパンが独り寂しく、かの暗い地下室の冷たい土の上に死に掛って横たわっていると思えば、一種悲愴な気持がわいてくるのであった。
「もし死ぬようなことがあったら。」と判事が声を潜めていった。
「もし死にでもしたら、その時こそ判事さんレイモンド嬢を警戒せねばなりません。なぜならば、手下の者はきっと復讐するでしょうから。」
ボートルレはしばらく経つと、学校の休暇が今日でお終いになるからといって、判事が相談相手に引き留めるのも断って、パリへ帰ってしまった。彼はまたジャンソン中学の学生になった。
ガニマールは僧院の中をすっかり調べたが何の手懸りもないので、彼もまた同じ日の夜行でひとまずパリへ引き上げた。
不可思議な暗号紙片
こうしてわずか二十四時間のうちに、たった十七歳の少年の言葉によって、少しも分らなかった事件の糸はほぐされた。首領《かしら》を救わんとする強盗団の計画はわずか二十四時間で見事に破られ、かの巨盗アルセーヌ・ルパンの逮捕は確実になった。新聞紙はボートルレの記事で
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