。伯爵も出てきてみんな一生懸命で火を消し止めたのは午前二時であった。もちろん犯人の影さえ見えない。
「どうして納屋などに火をつけるのか理由《わけ》が分らない。」と伯爵はいった。
「伯爵まあ私と一緒にいらっしゃい、その理由《わけ》を申し上げますから。」
警部と伯爵は連れ立って僧院の方に来た。警部は二人だけを残しておいた巡査の名を呼んだ。二人の巡査は出てこなかった。他の巡査たちが二人を探しに行った。と、小門の入口のところで二人の巡査が目隠しをされ、猿轡《さるぐつわ》を嵌められて、細縄で縛られているのを見つけた。
「残念ながら我々は誑《たぶらか》された。」と警部が呟いた。「あの銃声も火事もみんな我々の警戒を破るためだったのです。我々がその方に気をとられている間に、奴らは仕事をしていったのです。」
「仕事とは?」と伯爵が聞いた。
「傷ついた首領《かしら》を運び出すためです。」
警部はたいへん口惜しがった。そればかりではなかった。夜が明けてから、ボートルレ少年が見張りの巡査に眠り薬を飲ませて、窓から逃げ出したことが分った。
二 怪中学生
医学博士の誘
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