ig46187_03.png)、96−15]357※[#中に点のある△を左に90度傾けた三角形(fig46187_04.png)、96−15]
 四行目はこうなっている。少年は洞穴《ほらあな》へ出掛けて種々《いろいろ》と方法をやってみた。
 少年は考えついて洞穴《ほらあな》のDとFの字に両足をまたがってみた。暗号文字のDとFの上に線が引いてあるのはこれに違いない。少年はそれから十九という長さだけの紐をつくって、それを令嬢室《ドモアゼルむろ》の壁に張りながら歩いていった。すると紐の終りの所の壁に、あったあった浮彫にした十字があった。19F+の暗号の文字はこれで分った。
 少年は慄える手でその十字を握り、ハンドルを廻すように廻してみた。煉瓦が少し持ち上った。占め!、もう一度力を込めて廻したがそれきり動かない。今度は上から力いっぱい圧してみた。と突然がたんと音がして、見る間に右手の壁がぐらりと廻って、魔の口を開いたように暗黒な入口が開けた。
 少年はふらふらと気が遠くなるようだった。少年はよろめきながら外へ出た。
 少年は警察へこれまでのことを手紙で知らせてやり、誰かに来てくれるように頼んだ。
 その返事を待つ間、少年は令嬢室《ドモアゼルむろ》で二夜をすごした。それは実に恐ろしかった。今にも誰か来て自分を刺し殺すんではないだろうかと。
 初めの夜は何事もなかった。次の夜のことである。少年はじっと身を堅くした。例の煉瓦の扉が音もなく開いて、その闇の中から黒い影が現われた。少年は数えた、三人、四人、五人……
 五人の男はそれぞれ大きな荷物を抱えていた。彼らはルアーブルの方へ行く道を進んでいった。まもなく向うで自動車に乗ったらしく、音がしてそれが遠去《とおざ》かっていく。少年は洞穴《ほらあな》を出てこれを見届けたが、引き返そうとしてはっとして樹蔭《こかげ》に隠れた。またも五人の男が荷物を持って出てきた。そしてやはり自動車で走り去った。
 少年は[#「少年は」は底本では「年少は」]恐ろしくなったのでその夜は宿へ帰った。翌朝《よくちょう》ガニマール探偵がやってきた。少年は大喜びで探偵を迎えた。ガニマールは少年のこれまでの働きを褒めた。
 二人はルパンを捕えることを相談した。ガニマールは奇巌城の中へ突撃して、もしルパンがその中にいなかったら、いつか来た時を見張っていて捕まえようといっ
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