(義太郎を先に立てながら降りてくる。義太郎の右の足は負傷のため跛《びっこ》になっている)巫女さんいうても、ちょっとも効かんやつもござんすからなあ。
義助 義はよう金比羅さんの神さんと話しするいうけになあ。金比羅さんの巫女さんいうたら、効くかも知れんと思うてな。(声を張り上げて)およしや、ちょっと出て来いよ。
およし (内部にて)なんぞ用け。
義助 巫女さんを頼んだんやがなあ、どうやろう。
およし (折戸から出て来る)そらええかも知れん。どななことでひょいと治るかも知れんけにな。
義太郎 (不満な顔色にて)お父《と》う、どうしたから降すんや。今ちょうど俺を迎えに五色の雲が舞い下るところであったんやのに。
義助 阿呆! いつかも五色の雲が来たいいよって屋根から飛んだんやろう。それでその通り片輪になっとるんや。今日は金比羅さんの巫女さんが来て、お前に患いとるものを追い出してくれるんやけに、屋根へ上らんと待っているんやぞ
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(その時、藤作、巫女を案内して来る。巫女は五十ばかりなる陰険な顔色した妖女のごとき女)
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