短うてな。
巫女 神さまが乗り移っている最中に私を足蹴にするような大それたやつは、今晩までの命も危ないぞ。
末次郎 何をぬかすんや。
およし (末次郎をささえながら)黙っておいでよ。(巫女に)どうもお気の毒しましたや。
巫女 (藤作と一緒に去りながら)私を蹴った足から腐り始めるのや。(二人去る)
義助 (末次郎を見て)お前あななことをして、罰が当ることはないか。
末次郎 あんなかたりの女子に神さんが乗り移るもんですか。無茶な嘘をぬかしやがる。
およし 私は初めから怪しいやつじゃ思うとったんや、神さんやったらあななむごいこというもんけ。
義助 (なんの主張もなしに)そら、そうやな。でもな末! お前、兄さん一生お前の厄介やぜ。
末次郎 何が厄介なもんですか。僕は成功したら、鷹の城山のてっぺんへ高い高い塔を拵《こさ》えて、そこへ兄さんを入れてあげるつもりや
義助 それはそうと、義太郎はどこへ行ったやろ。
吉治 (屋根の上を指しながら)あそこへ行っとられます。
義助 (微笑して)あいかわらずやっとるのう。
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(義太郎は前の騒動の間にいつの間にか屋根へ上っていたらしい。下の
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