応仁の乱
菊池寛

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)蠕動《ぜんどう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)将軍|義教《よしのり》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]

 [#…]:返り点
 (例)乱[#二]入京中[#一]
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       天下大乱の兆

 応仁の大乱は応仁元年より、文明九年まで続いた十一年間の事変である。戦争としては、何等目を驚かすものがあるわけでない。勇壮な場面や、華々しい情景には乏しい。活躍する人物にも英雄豪傑はいない。それが十一年もだらだらと続いた、緩慢な戦乱である。
 併しだらだらでも十一年続いたから、その影響は大きい。京都に起った此の争乱がやがて、地方に波及拡大し、日本国中が一つの軟体動物の蠕動《ぜんどう》運動の様に、動揺したのである。此の後に来《きた》るものが所謂《いわゆる》戦国時代だ。即ち実力主義が最も露骨に発揮された、活気横溢せる時代である
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