求めていたものを、死んで何もいらなくなった今になって、はじめてアントワープの人達が与えたのです。
 生命《いのち》のある間はなれられなかったこのふたりは、死んでからもはなれませんでした。少年の腕はどうしてもはなすことのできないほどしっかりと犬を抱きしめていました。
 恥じ入って後悔した村の人達は、ふたりのために、神さまが特別のお恵みをお与え下さるように祈りながら、墓を一つにして、主従抱き合ったままで葬りました。――永遠《とこしえ》に――(おわり)



底本:「小学生全集26 黒馬物語・フランダースの犬」興文社、文芸春秋社
   1929(昭和4)年5月23日発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
その際、以下の置き換えをおこないました。
「或→ある、あるい 併し→しかし 唯→ただ 出来→でき 尚→なお 筈→はず 勿論→もちろん」
※総ルビをパラルビにかえました。
入力:大久保ゆう
校正:門田裕志
2003年11月6日作成
2005年12月17日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書
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