を吐き込んでやった。それからあいつの畑を、石のようにかんかんに固めて鋤《す》き返しが出来ないようにしておいた。そして、あいつはとても鋤きに出て来やしないだろうと思っていた。ところがあいつはとてつもない馬鹿で鋤を持って来て鋤きはじめた。あいつは腹が痛いので、うんうん唸りながら、それでも仕事は止《や》めない。そこでおれはあいつの鋤を破《こわ》してやった。ところがあいつは家《うち》へ行って別のを持って来てまた鋤きはじめた。おれは地面へもぐり込んでその鋤先を捉えた。が、鋤先にはいい捉えどころがない。あいつは一生けんめい[#底本では「い」が重複]鋤へ寄っかかる。おまけに鋤先は鋭く切れる。とうとうおれは手を切った。あいつはその畑をほとんど鋤いてしまって、あと小さい畝《うね》一つ残しただけだ。兄弟たち、一つ手を貸しに来てくれ。あいつの始末をつけないと、折角《せっかく》の骨折《ほねおり》もだいなしになってしまう。もしあの馬鹿がああして畑の仕事をつづけて行くと、あいつらは困るということを知らないだろう。あいつが二人の兄を養って行くだろうからね。」
兵隊のシモン係の小悪魔は明日から手伝いに行くと約束しま
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