イワンの馬鹿
SKAZKA O IVANE−DURAKE
トルストイ Tolstoi
菊池寛訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)肥満《ふとっちょ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二三|把《わ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)つんぼ[#「つんぼ」に傍点]
−−

        一

 むかしある国の田舎にお金持の百姓が住んでいました。百姓には兵隊のシモン、肥満《ふとっちょ》のタラスに馬鹿のイワンという三人の息子と、つんぼ[#「つんぼ」に傍点]でおし[#「おし」に傍点]のマルタという娘がありました。兵隊のシモンは王様の家来になって戦争に行きました。肥満《ふとっちょ》のタラスは町へ出て商人に[#底本では「に」が重複]なりました。馬鹿のイワンと妹のマルタは、家《うち》に残って背中がまがるほどせい出して働きました。兵隊のシモンは高い位と広い領地を得て、王様のお姫様をお嫁さんに貰いました。お給金もたくさんだし領地から上《あが》る収入《みいり》も大したものでしたが、彼はそれを、うまくしめくくっていくことが出来ませ
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