を使いはじめました。かれは何を買っても大へん高くお金を払うので、誰もかもお金欲しさに、どしどしこの新しい商人のところへ集まって来ました。そこで大したお金が人々のふところに入って、人民たちはとどこおりなく税金を払うことが出来ました。
タラス王はほくほくもので喜びました。
「今度来たあの商人は気に入った。これでおれはよりたくさんの金を残すことが出来た。したがっておれの暮しはますますゆかいになるというものだ。」
とタラス王は思いました。
そこでタラス王は、新しい御殿をたてることにしました。かれは掲示を出して、材木や石材などを買入れることから、人夫を使うことをふれさせ、何によらず高い価《ね》を払うことにしました。タラス王はこうしておけば、今までのように人民たちが先を争って来るだろう、と考えていました。ところが、驚いたことには、材木も石材も人夫もすっかりれいの商人のところへ取られてしまいました。タラス王は価《ね》を引き上げました。すると商人は、それよりもずっと上につけました。タラス王はたくさんの金がありましたが、れいの商人はもっとたくさん持っています。で、商人は何から何までタラス王の上に出まし
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