わない。ひとつ今度は麦束の中へ入って腐らしてやれ。」
 そこで小悪魔はライ麦の畑へ行って、麦束の中に入り込みました。麦束は腐りはじめました。小悪魔は、麦束を暖めましたが、やがて自分のからだもぽかぽかと暖くなって、ぐっすり寝込んでしまいました。
 イワンは馬に草をやると、用意して妹と一しょに、ライ麦を運びにやって来ました。やがて麦束を積みはじめました。二束ほど車に投げ込んで、三束目を上げようとして熊手をつき込むと、その尖《さき》が、小悪魔の背中へ、突き刺さりました。熊手をふり上げてみると、その尖にはしっぽの切れた小悪魔が、のがれようとして、しきりに身をもがいて、のたくっています。
「おやおや、また出て来やがった。」
「いや、ちがうんです。先来たのは私の兄弟です。私はあなたの兄さんのシモンについていたんです。」
と小悪魔は言いました。
「ふん、どいつだってかまやしない。お前も同じ目にあわしてやるのだ。」
 イワンは小悪魔を荷車へたたきつけようとしました。小悪魔は叫びました。
「ま、待って下さい。二度とあなたの邪魔はいたしません。あなたの言いなりに何でもいたします。」
「じゃ、何が出来る。」
「何でもあなたのお好きなものから兵隊をこしらえることが出来ます。」
「兵隊は一たい何の役に立つのだ。」
「何の役にだってたちます。あなたが命令を下しさえすればどんなことでもします。」
「じゃ唄がうたえるかい。」
「ええ出来ますとも、あなたが命令なさりさえすれば。」[#「。」」は底本では欠落]
「よしよし、じゃ一つこしらえてくれ。」
 すると小悪魔は、
「じゃ、その麦束を一束取って地べたにつきたてて、こうおっしゃればいいのです。[#「いいのです。」は底本では「いいのです。」」]
[#ここから2字下げ]
麦束よ麦束よ
おれの家来に命《い》いつける
一本一本の麦藁から
兵隊が一人ずつ飛び出して来い。」
[#ここで字下げ終わり]
 イワンは麦束を取り上げて地べたへ叩きつけると、小悪魔の言った通りやりました。麦束がバラバラに解けて落ちたかと思うと、藁がのこらず兵隊になって、ラッパ吹きや、太鼓打ちまでそろっていました。こうして一隊すっかり出来上りました。
 イワンは面白がって笑いながら、
「こりゃ面白い。立派だ。娘っ子がさぞ喜ぶこったろう。」
と言いました。
「じゃ私をはなして下さい。」
と小悪
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