お客さまたちに、あしたの晩もまた来てください、と言いました。
 あくる晩、また、お客さまが、みんなテーブルについて、ごちそうがすんだ時、シンドバッドは、いよいよ一番おしまいの航海の話をはじめました。

       一|番《ばん》おしまいの航海《こうかい》の話《はなし》

 さて、六度めの航海の後は、私はもう、けっしてどこへも行くまいと、心にきめていました。もう、ぼうけんがしたいとも思いませんでした。
 しかし、ある日、友達を呼びあつめて、ごちそうをしています時、召使の一人が入って来て、
「ただ今、カリフさまのお使がお見えになって、だんなさまにお目にかかりたい、とおっしゃいますが。」と、言うのです。
 私は、お使を通させて、さて、
「どういうご用でございましょうか。」と、聞きました。
 するとお使は、
「カリフさまが、お召しでございます。すぐにおいでください。」と、言いました。
 仕方がないので、私はすぐに御殿へ出かけました。そして、王さまの前に出ました。
「シンドバッドや、ひとつお前にたのみたいことがあるのだがね。それは、ほかでもない。わしは、セレンジブ王に、手紙と、おくり物とを、さ
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