えて、とび上ってしまいました。
 皆さん、それから私が、つくづくと、ほかにもたくさん寝ていた黒いものを見た時、まあ、どんなにおどろいたか、お察しください。それはみんな、黒い大きな蛇《へび》だったのです。
 なお、よくよくあたりを見ますと、ここは、岩のかさなりあった、深い谷底でした。どちらを向いても、びょうぶのようにけわしい山が、そびえていました。そして、岩の間には、このおそろしい蛇よりほか何にもいませんでした。
「ああ、こんなことなら、いっそあの島にいた方が、ましだった。わざわざ、もっとひどい目にあうために、この島へ来たようなものだ。」と、私は泣き泣き、ひとりごとを言いました。
 そして、じっと岩を見つめていますと、何だか、きらきらとよく光る石が、そこら一面にちらばっているではありませんか。ふしぎだなと思って、ずっとよって見ると、それがみんな、大へん大きなダイヤモンドでありました。ちょうど小石くらいの大きさのものです。私は、とび上るほどよろこびました。
 しかし、すぐに、おそろしい蛇が、私にかみつこうとして、ねらっているのに気がつきましたから、そのよろこびはどこへやら、背中にぞっとさむ
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