の上へとまりました。
 この時、ふと私は思い出したことがありました。それは、水夫たちに聞いていた、ロックという鳥のことです。それで、すべすべした円いまりは、その鳥の卵にちがいないと思いました。
 こう思いつくと、すぐに私は、頭にまいていた布をといて、つなを作りました。そして、それを自分の腰のまわりにまわして、両方のはしを、しっかりとロックの足にむすびつけました。
「しめたぞ。この鳥は、今に、とび上るにちがいない。そして、きっと、私をこの島から、つれ出してくれるにちがいない。」私は、こうひとりごとを言って、よろこびました。
 はたして、まもなく、私は地から持ち上げられました。そして、雲にとどくかと思うまで高くのぼってしまいました。それからまた、だんだん下へおりてゆきました。そして、地につきました。私は手早く、ずきんの布をときました。そしてロックからはなれました。
 ロックにくらべると、私はお話にならないほど、小さいものでした。それでロックは、まるきり私に気がつかなかったらしいのです。ロックはすぐに、そばに寝《ね》ていた大きな黒いものの方へとびかかってゆきました。そして、それを口ばしでくわ
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