海の方を見ました。けれども、海には何にもありませんでした。
 それで、こんどは、陸《おか》の方を見ました。すると、島のまん中ほどに、大きな、白い、円《まる》屋根のようなものが見えました。今まで一ぺんも、そんなものを見たことがないので、それが何だか、ちっともわかりませんでした。
 私は、ともかく、木からおりました。そして、大いそぎで、その白い円屋根の方へ走って行きました。
 しかし、いよいよそばまで行っても、それはかいもく何だかわかりませんでした。ちょうど大きなまり[#「まり」に傍点]のようで、すべすべしていて、とても、よじのぼることなどできませんでした。また、それかといって、中へ入って行こうにも、戸らしいものや、入口らしいものが、一つもありませんでした。どうにもしようがないので、私はただ、ぐるぐるそのまわりをまわっていました。
 すると、にわかに空がくもってきて、見る見る夜のように、まっ暗になってしまいました。
 それで、おそるおそる空を見上げますと、大きな鳥がまいおりて来て、そのつばさのかげのために、こんなになったのだということがわかりました。鳥は、またたくまにおりて来て、白い円屋根の上へとまりました。
 この時、ふと私は思い出したことがありました。それは、水夫たちに聞いていた、ロックという鳥のことです。それで、すべすべした円いまりは、その鳥の卵にちがいないと思いました。
 こう思いつくと、すぐに私は、頭にまいていた布をといて、つなを作りました。そして、それを自分の腰のまわりにまわして、両方のはしを、しっかりとロックの足にむすびつけました。
「しめたぞ。この鳥は、今に、とび上るにちがいない。そして、きっと、私をこの島から、つれ出してくれるにちがいない。」私は、こうひとりごとを言って、よろこびました。
 はたして、まもなく、私は地から持ち上げられました。そして、雲にとどくかと思うまで高くのぼってしまいました。それからまた、だんだん下へおりてゆきました。そして、地につきました。私は手早く、ずきんの布をときました。そしてロックからはなれました。
 ロックにくらべると、私はお話にならないほど、小さいものでした。それでロックは、まるきり私に気がつかなかったらしいのです。ロックはすぐに、そばに寝《ね》ていた大きな黒いものの方へとびかかってゆきました。そして、それを口ばしでくわ
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