やから引き出しました。そして、それを引いて森の岩をさして出かけました。岩の前まで来た時、ろばをそばの木につないでおいて、
「開け、ごま。」
と、言いました。すぐに岩がわれて、あのふしぎな戸が開きました。
もともとカシムは、大へんなよくばりやでした。それで、どろぼうたちの宝物を見て、とび上るほどよろこびました。そして、金貨の入っている大きそうな袋をえらんで、それを二十四も、戸のところまで引きずり出して来ました。そして、
「開け、大麦。」と、さけびました。
まあ、どうしたのでしょう、戸は閉まったままでした。カシムはあわてて、
「開け、あずき。」と、言ってみました。けれども、やっぱり戸は開きませんでした。それからはもうますますあわてて、
「開け、小麦。」だの、「開け、あわ。」だのと、おぼえているかぎりの、穀物《こくもつ》の名を言ってみましたけれど、やっぱり、だめでした。戸は一寸も開きませんでした。カシムは「ごま」をすっかり忘れていたのでした。
ちょうどその時、どろぼうたちが馬に乗って帰って来ました。そして、かしらが、
「開け、ごま。」
と、さけんで、ほら穴の中へ入って来ました。そして、
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