て、お父さんの家の晩ごはんによぶことにしました。しかし、このにせの商人は、アリ・ババの家へ行った時、アリ・ババに向って、
「あなたとご一しょにごはんをいただきたいのは山々でございますが、じつは私は、神さまに塩《しお》を食べませんと言ってお約束《やくそく》しているのでございます。それで、家でも、とくべつにいつも塩ぬきのりょうりをさせているようなわけでございますから、どうかあしからず。」
と言って、ごはんをたべることをことわりました。するとアリ・ババは、
「まあ、そんなことなら、ぞうさもないことでございますよ。今晩は、いっさい、塩を入れないように申しつけますから。」と言って、引きとめました。
 モルジアナは、この言いつけを聞いた時、少しへんだなと思いました。それで、おきゅうじに出た時、お客さまをよく気をつけて見ました。ところが、どうでしょう、そのお客さまはどろぼうのかしらで、しかも、そで[#「そで」に傍点]の中に短刀《たんとう》をかくして持っているのがわかりました。モルジアナはおどろいてしまいました。
「ふん、かたきと一しょに、塩をたべないのはふしぎじゃない。」と、モルジアナは心のうちでつ
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