かせました。アリ・ババは人がいるのを見て、とび上るほどおどろきました。けれども、モルジアナが、手っとり早く、すっかり話をして聞かせましたので、どろぼうは、みんな死んでしまっているのだということがわかりました。
アリ・ババは、こんな大きなさいなんからのがれたことがわかって、大へんよろこびました。そして、モルジアナに、
「ありがとう、ほんとうにありがとう。もうお前はどれいをやめてもいい。お前を自由な身にしてあげよう。また、そのほかにごほうびもあげよう。」と、言いました。
さて、どろぼうのかしらは、手下が一人もいなくなったので、森のほら穴で、ただ一人、大そうさびしく、また悲しい月日をおくっていました。けれども、アリ・ババへかたきうちをすることは、前よりももっともっと熱心《ねっしん》に考えていました。そして、またある一つの方法を考えつきました。そして、さっそく大きな商人のような顔をして、アリ・ババの息子《むすこ》の店のお向いに店を出しました。
この大商人は大そう金持で、そして大そうしんせつでありましたから、アリ・ババの息子は、すぐにこの人をすきになりました。それで、お近づきのしるしとし
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