たずねました。モルジアナはどれにも同じように、「まだ、まだ。」と言っておきました。そして一番おしまいのかめにだけ、ほんとうの油がなみなみと入っていたのでありました。
「あああ、まあ、なんてふしぎな油商人なんだろう。全く、あきれてしまう。だが、これはきっと、だんなさまを殺すつもりにちがいない。」
モルジアナは、うっかりしていては大へんだと思いました。
そこで、すぐに大きなつぼを持って来て、一番おしまいのかめから油をくみ出して、それを火の上にかけました。そして油がにえ立つのを待って、それを、どろぼうたちのかくれているかめの中へ、次々とついで歩きました。それでどろぼうたちは、みんな殺されてしまいました。
こんなにしてしまったものですから、かしらが庭をめがけて小石を投げた時は、どろぼうは一人だって出て来ませんでした。それで、かしらが庭へ出て、かめの中をのぞきますと、どろぼうたちはみんな死んでいたのでした。せっかくのかたきうちは、すっかりあべこべになってしまったのでした。かしらは、ほうほうのていで、森へにげて帰りました。
あくる朝、モルジアナは、アリ・ババを庭へつれ出して、かめの中をのぞ
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