んかはしませんでした。気をつけてカシムの家を見て、しっかりとおぼえこんでおいて、晩のかたきうちの用意をしに、森へ帰りました。
 そして、まずはじめに、ろばを二十ぴきと、大きなかめ[#「かめ」に傍点]を三十九と持ち出しました。そして、たった一つのかめに、油をなみなみとつぎこんだきりで、ほかのかめには一人ずつどろぼうを入らせました。そして、このかめをろばにのせて、町へ出かけました。そして、カシムの家の前まで来ましたら、アリ・ババはちょうど、外へ出て夕凉《ゆうすず》みをしているところでした。
「今晩は。」
 かしらは、ていねいにおじぎをして、
「私は遠方《えんぽう》からまいった油商人でございますが、今晩だけ、とめていただけませんでしょうか。そして、この油がめをお庭のすみにでもおかせていただけたら、大へんつごうがよいのでございますが。」と、たのみました。
「ああ、よろしいとも。さあお入んなさい、さあ、さあ。」
 すぐにアリ・ババは、きげんよくしょうちしました。そして門をあけて、ろばを庭の中へ入れさせました。それから召使のモルジアナに、お客さまにごちそうをしてあげるように、と言いつけました。
 
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