ルジアナは、このへんな目じるしを見つけました。
これはきっと、だんなさまに悪いことをしようとする者がつけたしるしにちがいない、とモルジアナは思いました。それで、チョークを取って来て、町じゅうのどの家の戸にも、みんな同じようなしるしをつけて歩きました。
さて、どろぼうたちは、町へ行った仲間から、あの切りきざんだ人間の家がわかったということを聞いて、大へんよろこびました。そしてその晩、戸に白い目じるしのついている家をさして、かたきうちに出かけました。けれども、町までおしかけて来た時、どの家の戸にも同じ目じるしがついているので、どれが目ざす家だか、かいもく知れませんでした。
「ばかめ、これが、りこうな人間のすることかい。お前は、すぐに殺してやるから待っていろ。」
かしらは、けさ見つけに来たどろぼうを、こう言ってしかりつけました。それから、
「仕方がない、どろぼうの家はおれがさがすことにしよう。」と、言いました。
次の日、かしらは、ふつうの人のような風《ふう》をして、くつ屋の店へ行って、カシムの家を教えてもらいました。けれども、このかしらはりこう者ですから、チョークでしるしをつけたりな
前へ
次へ
全21ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング