すと、すぐに御殿をしなへ持って帰って、もとの場所に立てるようにと言いつけました。
 次の朝、王さまは大そう早く目をおさましになりました。王さまは悲しくておねむりになることができなかったのです。そして、まどのところへ行ってごらんになると、アラジンの御殿が、もとのところに立っているではありませんか。王さまは、うそではないかとお思いになりました。それで何べんも何べんも目をこすっては、じっと御殿の方をごらんになりました。
「ゆめではないのかしら。朝の光を受けて前よりももっと美しく見える。」とおっしゃいました。
 それからまもなく、馬に乗って、アラジンの御殿をさして、走っていらっしゃいました。そして、アラジンとお姫さまとを両手にだきしめて、およろこびになりました。二人はアフリカのまほう使の話をしてお聞かせしました。アラジンはまた、まほう使の死がいもお目にかけました。
 それからまた、昔のような楽しい日がつづきました。

 しかし、まだもう一つアラジンに心配が残っていました。それは、アフリカのまほう使の弟《おとうと》も、やっぱりまほうを使っていたからです。そして、その弟は、兄さんよりももっと悪者だ
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