できませんでした。けれども、王さまが大そうおやさしそうなので、やっと勇気《ゆうき》を出して、アラジンにお姫さまをいただきたいとお願いしました。それから、
「これはアラジンが王さまへのささげ物でございます。」と言って、まほうの果物をつつみから出して、さし上げました。
あたりにいた人々は、こんなりっぱな果物を生れて一度も見たことがなかったものですから、びっくりして声を立てました。果物はいろいろさまざまに光りかがやいて、見ている人たちがまぶしがるほどでした。
王さまもおおどろきになりました。そして大臣を別のへやへお呼びになって、
「あんなすばらしいささげ物をすることができる男なら、姫をやってもいいと思うが、どうだろうな。」と、ご相談《そうだん》なさいました。
ところが大臣は、ずっと前から、お姫さまを自分の息子のおよめさんにしたいと思っていたものですから、
「そんなにいそいで約束をあそばないで、もう三月《みつき》ほど、待たせなさいまし。」
と、申し上げました。王さまも、なるほどそうだとお思いになりました。それで、アラジンのお母さんに、もう三月待ったら、姫をやろう、とおっしゃいました。
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