しながら、体《てい》よく自分の要求を曲げるよりほかに仕方がなかった。ガスコアン大尉にだんだんこういうことが分かった。それは、ゼラール中尉と一緒にいるということは、常に彼の意志や欲求のお相伴をするということであった。中尉は常に二人が行動するプログラムを作った。
「君、今夜はオペラへ行こう」とか、「今日はムーズ川の堤を散歩しよう」とかいうことを、彼は巧みに、しかも執拗に相手に強いた。しかもそれを拒絶することは、たいていの場合に友情を損なう危険を伴うていることが多かった。十日と経ち、二十日と経つうちに、大尉はゼラール中尉と交情を保っていくことは、自分の意志を中尉の意志の奴隷にするのと、あまり違わないことを沁々《しみじみ》と悟ってしまったのである。
大尉はほんの僅かな会話にも、ゼラール中尉の意志――我意が自分を圧倒しようとかかってくることをよく感じたのである。
ガスコアン大尉にとって、ゼラール中尉との交情が厭な荷物として、感ぜられるようになった動機の一つには、こんなことがあった。
ある日、二人は例のごとくカフェー・オートンヌで葡萄酒を飲んでいた。二人の前の杯《さかずき》に、ゼラール中尉の
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