ゼラール中尉
菊池寛
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)堡塁《ほうるい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)七〇年|酒《しゅ》の味
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+無」、第3水準1−86−12]《ぶな》の
−−
リエージュの町の人で、ゼラール中尉を知らぬ者はあるまい。中尉は、リエージュの周囲にいくつも並んでいる堡塁《ほうるい》の一つである、フレロン要塞の砲兵士官である。スタイルの素晴らしく水際立った、立派な士官である。中尉の短く刈り込んだ髭や、いつも微笑を湛《たた》えている蒼い瞳や、一本一本手入れの届いている褐色の頭髪などは、誰にも快い感じを与えずにはいなかったのである。
リエージュにある、すべてのバーやカフェーの女は、調子のよいゼラール中尉を知っている。パリからの新しい流行歌《はやりうた》を、リエージュでいちばん先に歌うのもこの中尉である。パリ下りだというイカモノの歌劇歌姫《オペラシンガー》に、一番に花輪を贈るの
次へ
全18ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング