よろしゅうございますか。
けい ええ、後のことは後のことで、また考えましょう。女の子ばかりだから、案外自分達でよろしくやってくれるかもしれませんよ。
清 さよでございますね。では……。
けい あ。御苦労さま。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから3字下げ]
清、去る。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
井上 なんですか。支那からのお客様ですか。
けい ええ。
井上 ははあ。長い御逗留《ごとうりゅう》で。
けい ええ。少し長くなると思うんですよ。ひょっとすると、ずうっとこの家の人になるかもしれないのですが……。
井上 そりゃそりゃ。向うの人とくると、言葉も分らないだろうし、お大抵じゃありませんなあ。
けい いいえ、言葉は、片親が日本人ですから、案外平気なんだろうと思うんですがね。何しろ毎日の習慣や、衣食がねえ……違うでしょうから……。
井上 そうでしょうとも。同じ日本人同志でも土佐の人間と越後の人間じゃ、毎日のしきたりってものがこれ、随分違うものでしてね。私なんぞも、仕事の上で仲間と一緒に旅へ出ることがよくありますがね、びっくりして笑っちまうような
前へ
次へ
全111ページ中95ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森本 薫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング