ませんか。生きていて血の通っている人間じゃありませんか。お母さまは夜中ふと目をさまして、自分の手で自分の胸を抱いてみるようなことはおありにならないのですか。道端の小さい花をみて生きていることの嬉しさがおさえきれないというようなことが一度でもおありにならないのですか。お母さまは……。
けい (いきなり、ぴしゃりと知栄の頬を打つ)
知栄 (驚いてちょっとの間けいの顔をみている)
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章介、入ってくる。中の有様にこれもちょっとまごつく。
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章介 どうしたんだね。
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知栄、いきなり立ち上って馳け出そうとする。
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章介 おい。どこへ行くのだ。
知栄 私はお父さまの所へ行きます。これからお父さまと一緒に暮すんです。
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出てゆく。
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章介 知栄。おい、知
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