少しでも良心のお有りの間はね。でなければ、一体妾に、どうしろと被仰るんですの。
須貝 どうしろですって……。僕は、そんなことは言ってやしません。(困って)第一、どうしろ、こうしろと言う話と話が違うじゃありませんか。僕は、大体始めっから何にも言わないつもりだったのです。それだのに……。
諏訪 言わないつもりだった。だけどあなたは言って了ったのよ。あなたは言って了ったんだわ。妾がもっと若かったら、それとも、もっと莫迦な女だったら、大変なことになったかもしれないのよ。それこそ……。
須貝 奥さん!
諏訪 いいえ、須貝さん!
須貝 奥さん、あなたが軽蔑なさるのは、あなたの勝手です。しかしその、年上を振り回すのだけは勘弁して戴きたいものですね。
諏訪 どうして。でも、妾はあなたなんかより年上です。考えだってずっと深いのです。
須貝 知っています。しかし、あなたが年上だろうと何だろうと、僕は別に怖がってなんかいないのです。なんです、そんなことくらい。
諏訪 (自信がなくなって来て)あなたのやりかたは利巧だとは言えないわ。妾……怒ってよ。ほんとに、今迄こんなに親切にして上げた妾に……妾、どうしていい
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