だって、妾よりはずっといいし、第一姿に品ってものがあるわ。しっとりしていて物事の締《し》め括《くく》りをちゃんと知っている聡《さと》い子供だわ。妾は始終家を留守にしているけれど、あの子がいて呉れるから万事安心と言うものだわ。それに……(行詰る)
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間。
[#ここで字下げ終わり]
須貝 それに、どうしたんです。それだけですか、被仰ることは。
諏訪 彼方へいらっしゃいったら。どうして妾独りがそんなにお喋《しゃべ》りしなきゃいけないの。
須貝 無理に、とは言ってやしません。もともと僕からお願いしたわけの話じゃないんだから。
諏訪 あなたは恥知らずですよ。妾は、三人の子供の母親ですよ。
須貝 しかし、実際は……あなたは……。
諏訪 お黙んなさい。あなたは何にも言うことはありませんのよ。
須貝 奥さん。あなたはものの五分間も御自分独りでたて続けにお喋りをなすった、いいですか。僕は黙って拝聴しましたよ。この上黙っていなければならないんですか。あなたにはもう、言うことなんか、何にも無いじゃありませんか。
諏訪 えーえ、そうですとも。あなたは黙っていなければいけません。あなたに、
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