納 ゆかない?
昌允 ――。そんなことは知らんよ。
未納 お兄さんは此の頃陰気ね。
昌允 (立上る)俺は前と変らない。
未納 以前は、そうでもなかったわ。
昌允 俺はお前に俺の批評をすることは許さん。
未納 うまく言ってるのね。
昌允 なに。
未納 うまく言って、妾に須貝さん牽制させといて、自分は美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]姉さんを……って考え、分っててよ。
昌允 あッ、そうか。お前は大分|性質《たち》が悪くなったな。
未納 お兄さんこそよ。
昌允 しかし、俺だってそんなことは気がつかなかった。
未納 美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11]さんね。須貝さん好きよ。何とかしなくちゃァ。
昌允 お前と、どっちが沢山だ。
未納 妾なんか、なんでもないんだったら。
昌允 (未納の方を見ないで)お前川原で泣いてたろう。
未納 嘘だわ、そんなこと。
昌允 泥でよごれた顔と、涙でよごれた顔と見わけがつかないと思ってたのか。
未納 ――。
昌允 (坐る)お前が石を、擲《ほう》ってた時、近よって行ったのは俺だよ。
未納 ――。
昌允 須貝さんだと思ってたんだろう。あの時
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