美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] そうなんですの。此の間初めて、舞台稽古をみたんですけど、全部あれでしょう、和服みたいなものでしょう、そこへ音楽が妙なんですもの……妾なんかまるで面喰《めんくら》って了って……。
昌允 まあ、あなたが踊らないから仕合せだがね。(氷を割っている)
須貝 何て言うんでしたっけ、題は。
昌允 よく知りません。源氏物語かなんかから取ったつもりなんでしょう。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 夕顔からよ。
須貝 さて、成功だといいが。
昌允 しやしませんよ。妙に変ったことなんか、しない方がいいんですがね。周囲からおだてられるとすぐその気になるから……。
須貝 まあ、そう言ったものでもないでしょう。今の時代だから、そう言う趣向もいいかもしれない。
昌允 目先を変えるだけなら。しかし、目先なんか、いくら変えたって駄目ですよ。
須貝 そうかな。しかし、変るって言うことは、僕には別に悪いことには思えないが。
昌允 バハのプレリウドから、いきなり源氏の夕顔にね……何ういうことでしょう、そりゃ。その次はまたツアーベルかネヴィンですよ。

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