ると、これからあなたに平気で物が言えなくなるなあ。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] ――
須貝 なに、気にすることはないんです。ただ……僕は……あなたに御迷惑をかけると済まないと思うもので……。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] そんなことありませんわ。だけど、あのう……(何か云おうとするが、うまく云えない)妾ね……(思い切って、話しそうになる)
[#以下3字下げ]
昌允《まさたね》、川原からのっそり入る。
[#ここで字下げ終わり]
須貝 おお。
昌允 ああ、あなたは、今日はもう、ちっとも行かないんですね、撮影所へは。
須貝 今日は一ん日、休みます。
昌允 (川原の方を振り返って)はははあ、未納の奴……須貝さんと間違えたんだな。
須貝 どうか、したんですか。
昌允 いやァ、なんでも……。
美※[#「にんべん+予」、第3水準1−14−11] 未納ちゃんに、お会いになったの。
昌允 会ったって言うわけじゃないんだ。川原でぶんぶん石を抛《ほう》ってたからね。近づいてって、声を掛けようと思うと、ふり向きもしないでどんどん行っちまやがった。おかしな奴だ。

前へ 次へ
全102ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
森本 薫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング