いましたが、あの人のこれから先のことを考えてみて、非常に、なんだか楽しい気持がしてきました。
弘 あなたは、私のことを前から御存じだったのですか?
収 あなたのお出でになる少し前から。
弘 私があのひとと結婚したがっていると言うことも?
収 ええ。それからあのひとの母さんがそうさせたがっていると言うことも。
弘 ちょっと待って下さい。それは、また別の問題です。
収 今日、少くとも今日はそう心を決めている筈です。
弘 じゃ、あなたの気持は、もう動かないのですね。
収 ええ。
弘 若し、私がこのまま黙って帰って、二度と此処へやって来ないとしたら。
収 そしたら、みんなが不幸になるだけです、僕も含めて。何にもならないことです。誰も喜ばない。
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あさ子、少し遅れて、真紀。
[#ここで字下げ終わり]
あさ子 何の話、面白そうね。
収 あなたの悪口さ。言われた仕返しに。
あさ子 嘘でしょう。
収 (弘に)そうですねえ。
弘 ほんとですよ。
あさ子 ううん、あなたはあたしの悪口は言わないわ。
収 あれです。あんな気でいるんだから。
真紀 さあ、御飯にしましょう。一緒に来て下さい
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