ん。女の雑誌はね。
収 自分じゃ、わからないんだと思ってるんです。
弘 ほう。
収 あなたも、あのひとが好きになりそうですね。
弘 好きですね。大変好きです。ほんと言うと、私はあのひとを貰いたいと思ってるんです。細君にですね。私は今年三十三です。
収 どうしてそんなことを僕に仰言るんです。僕達はまだ五分間しかお話していませんよ。それじゃまるで長い間の友達みたいじゃありませんか。
弘 構わないでしょう。あなたはいい人だと思いますよ。
収 益々《ますます》驚きますね、どうしてです。
弘 そう感じたからです、見た時。
収 至極《しごく》簡単ですね。そんな直感を信用なさるんですか?
弘 信じますね。医者ってものは一体そう言うものです。
収 妙ですね、そりゃ。一番科学的に物を見る筈の……。
弘 あなたはどうです。
収 さあ、僕は。
弘 私はあまりよくは思われていないようですね。
収 どうしようかと思って、考えてるところです。(笑いながら)
弘 私だって、これで悪い人間じゃありませんよ。そうはみえませんか?
収 ――。
弘 間違ってるかもしれません。もし、そうだったら許して下さい。これは多分邪推か
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