(むっとして)お喋りは止せったら。一々余計なこと言うもんじゃないよ。(あさ子舌を出す)
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間。
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収 どうも唇が乾いて仕方がないのですが、あれは、やはり胃が悪い所為《せい》でしょうか。
弘 始終そうなんですか?
収 ええ、此の頃ずっと。
あさ子 運動不足よ。
弘 出来ませんね、そりゃ。
あさ子 閑で困ってるくせに。
弘 それは、あなたのことでしょう。
あさ子 あたしはとっても忙しいのですよ。毎日いろんなことで。
弘 お茶とか花とか。
あさ子 あんなもの。
弘 おやおや。
あさ子 どこがいいんでしょうねえ。あたしなんかちっとも面白くない。
弘 やってるうちに、わかるのでしょう。
収 わかる迄には止して了うのですよ。
あさ子 しないのと同じね、止そうかしら、あたし。
弘 止すことは一番に言いますね。
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女中。
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女中 (あさ子に)奥さまがちょっと。
あさ子 (立上り)待っててね。
女中 お仕事は片付けましょうか?
あさ子 仕事って、(卓の上の人形をみて)ふふ、いいの。(去る。女中去る)
弘 いいで
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