れないだろうと思うんだ。
あさ子 再来週《さらいしゅう》は?
収 多分。
あさ子 じゃ、またそん時ね。
収 来られないだろう。その次も、それから後もずうっと。
あさ子 あら、どうして?
収 (焦《じ》れったく)どうしても糞もあるもんか。来られないと言ったら来られないんだ。
あさ子 (立上り、大きな声で)母さん母さん!
収 (驚いて)なんだ、そりゃ。
あさ子 母さんをよぶのよ。
収 よぶのさ、大きな声だからね、あなたの声は。よんでどうするのだ。
あさ子 よぶだけよ。
収 じゃ、よばなくたって、同じじゃないか。
あさ子 (笑って)なら帰るなんて言わないか。
収 ――。
あさ子 母さんは、あたしのしようと思うことは何でも、黙ってしてくれるから。
収 (参って)いいよ、いいよ。僕だって黙ってしてやるよ。強い女だな、君は。(坐る)
[#ここから3字下げ]
女中。
[#ここで字下げ終わり]
女中 よし子様のお兄様がいらっしゃいましたけれど……
あさ子 あたしじゃないでしょう。母さんいるんでしょう。
女中 ええ、でも奥さまが、そう……。
あさ子 そう。
[#ここから3字下げ]
女中、去る。
[#ここ
前へ
次へ
全38ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
森本 薫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング