。
真紀 え?
収 いや。
真紀 冗談々々。あのひとがもっと年下ならそう言うのよ。あなたはまだまだ勉強するんだものね。
収 (笑いながら)なかなか、うまいや。
真紀 私も、そろそろ決心しなくちゃいけないかねえ。
収 ――。(笑っている)
真紀 早すぎやしないわね。二十四。
収 そうですとも。どこかお話があるんですか。
真紀 ええ、まあ。
収 いいですね。医者、やはり。
真紀 ああ。
収 あのひとの知ってるひと?
真紀 いいえ。でも顔やなんかは知ってるの。お友達の兄さんで……お家もよく知ってるし……。
収 それならいい。
真紀 鈴木内科へ出てる方なのよ。
収 そうですか。それで……。
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あさ子。
[#ここで字下げ終わり]
あさ子 母さん、電話。
真紀 (立上り)そう、何方《どなた》?
あさ子 知らない。男の方よ、誰だか分かりますかって、笑ってるの、厭だわ。
真紀 そうかい。(去る)じゃ。
あさ子 今お店へ来た人ね、爪切りを呉れって言うのよ。こちらは薬局ですから爪切りはありませんて言ったら、そしたら剃刀《かみそり》の替刃って言うの、化粧品ならありますって言うとね、僕の
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