の泣声にむっくり顔を上げた。そして、しばらく女の打顫う胴体を見入っていたが、何と思ったか、
「おしお、さらばじゃ!」と言ったまま、すっくと立ち上った。
 おしおも吃驚《びっくり》して顔を上げた。
「血相変えて、今ごろどこへ行きなさんす?」
「どこへという宛もない」と、小平太は立ったまましおしおとして言った。「わしはただ、よそながらでもお前の顔が見たさに、恥を忍んでここまで来たばかりだ。わしはもうお前の良人と呼ばれる値打はない。お前もわしのようなものと縁を結んだのが因果《いんが》じゃと諦《あきら》めてくれい。こうしてお前の顔を見たのをせめてもの慰めに、わしはただわしの行く所へ行くつもりだ!」
「まあまあ待ってくだされ」と、おしおは立って小平太の袖《そで》に取縋《とりすが》った。「お前がそのように言わんすのももっともじゃ。もっともじゃが、わたしはわたしでまだ言うことがある。まあまあ下に坐《い》てくださんせいなあ」
 言われるままに小平太はふたたびなよなよと下《しも》に坐った。おしおはその膝に取縋って、涙を持った眼に下からじっと男の顔を見上げながら、
「今お前は俺のようなものと縁を結んだのが
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