しみを嘗《な》めてきた。死に到る道程の全部を歩いてきた。全部を経験してきた。それは同志の中の何人《なんびと》も知らないような焦熱地獄《しょうねつじごく》の苦しみであった。おお、俺はそれだけでも許さるべきではないか。他人は何とも言わば言え、俺は俺自身に対して言訳が立つのではあるまいか」
 こう考えてきた時、彼にはそれが動かすべからざる真理のような気がして、やや落着いてきた。で、雪の積った街路の上をじっと見詰めていたが、何と思ったか、またふらふらと立って歩きだした。
「考えてみれば」と、彼はまた歩きながら呟《つぶや》いた。「横川も言ったように、頭領大石が討入の日をこんなに延び延びにされたのもよくない。俺が死の苦しみを日々に嘗《な》めてきたのも、そのためだ。最後にこんなことになってしまったのも、そのためだと言わば言われないこともない! もし仇討《あだうち》がこの春決行されたら、百二十余名の同志があったはずだ。七十名に余る落伍者《らくごしゃ》の中には、俺と同じように苦しんだものもあったに相違ない。それをいちがいに不忠喚《ふちゅうよば》わりするのは当を得ない」
 彼は在来の落伍者のためにも弁ぜず
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