包まれてしまった。が、スクルージは全身の力を籠めてそれを抑え附けていたけれども、なおその下から地面の上に一面の洪水となって流れ出すその光を隠すことが出来なかった。
 彼は自分の身が疲れ果てて、とても我慢し切れない睡魔に圧倒されているのを意識していた。それだけなら可いが、なおその上に自分の寝室の中に寝ていることも意識していた。彼はその帽子に最後の一と拈《ひね》りを呉れた。それと同時に彼の手が緩んだ。そして、ようよう寝床の中へよろけ込むか込まないうちに、ぐっすり寝込んでしまった。

   第三章 第二の精霊

 素敵《すてき》もない大きな鼾を掻いている最中に不図眼を覚まして、頭を明瞭《はっきり》させようと床の上に起き直りながら、スクルージは別段報告されんでも鐘がまた一時を打つところであるのを悟った。ジェコブ・マアレイの媒介に依って派遣された第二の使者と会議を開こうと云う特別の目的のためには、随分際どい時に正気に返ったものだと、彼は心の中で思った。が、今度の幽霊はどの帷幄を引き寄せて這入って来るだろうかと、それが気になり出すと、どうも気味悪い寒さを背中に覚えたので、彼は自分の手でそれ等の窓掛
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