を染め出した葉の色の美しさは、なんとも譬《たと》えようがない。しかも私の庭の葉鶏頭は、どういうわけか年々の成績がよろしくない。他からいい種を貰って来ても、余り立派な生長を遂げない。私はこれのみを遺憾《いかん》に思っている。
わたしの庭の草花は勿論これにとどまらないが、わたしの最も愛するものは以上の数種で、いずれも花壇に栽えられているものでは無い。それにつけても、考えられるのは自然の心である。自然は人の労力を費すこと少なく、物資を費すこと少なきものを択《えら》んで、最も面白く、最も美しく作っている。それは人間にあたえられる自然の恩恵である。人間はその恩恵にそむいて、無用の労力を費し、無用の時間を費し、無用の金銭を費して、他の変り種のような草花の栽培にうき身をやつしているのである。そうして、自然の恩恵を無条件に受け入れて楽しむものを、あるいは素人と云い、あるいは俗物と嘲《あざけ》っているのである。こう云うのはあながちに私の負け惜しみではあるまい。[#地付き](昭10・3「サンデー毎日」)
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最後の随筆
目黒の寺
住み馴れた麹町を去って、目黒に移住してか
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