ぶんせい》六年|未年《ひつじどし》の生まれで、ことし六十九歳であるというのを知って、記者はその若いのに驚かされた。
「いえ、若くもありませんよ。」と、老人は云った。「なにしろ若い時分から体《からだ》に無理をしているので、年を取るとがっくり弱ります。もう意気地はありません。でも、まあ仕合せに、口と足だけは達者で、杖も突かずに山の手から観音さままで御参詣に出て来られます。などと云うと、観音さまの罰《ばち》が中《あた》る。御参詣は附けたりで、実はわたくしもお花見の方ですからね。」
話しながら飯を食って、ふたりは一緒にここを出ると、老人はうららかな空をみあげた。
「ああ、いい天気だ。こんな花見|日和《びより》は珍らしい。わたくしはこれから向島《むこうじま》へ廻ろうと思うのですが、御迷惑でなければ一緒にお出でになりませんか。たまには年寄りのお附合いもするものですよ。」
「はあ、お供しましょう。」
二人は吾妻橋《あづまばし》を渡って向島へゆくと、ここもおびただしい人出である。その混雑をくぐって、二人は話しながら歩いた。自分はたんとも食わないのであるが、若い道連れに奢《おご》ってくれる積りらしく
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