、一気に引きつづいて三冊を読み終えると、探偵物語に対する興味が油然《ゆうぜん》と湧《わ》き起って、自分もなにか探偵物語を書いてみようという気になったのです。勿論《もちろん》、その前にもヒュームなどの作も読んでいましたが、わたしを刺戟したのはやはりドイルの作です。
しかしまだ直ぐには取りかかれないので、さらにドイルの作を獲《あさ》って、かのラスト・ギャリーや、グリーン・フラダや、爐畔《ろはん》物語や、それらの短篇集を片っ端から読み始めました。しかし一方に自分の仕事があって、その頃は時事新報の連載小説の準備もしなければならなかったので、読書もなかなか捗取《はかど》らず、最初からでは約ひと月を費《ついや》して、五月下旬にようやく以上の諸作を読み終りました。
そこで、いざ書くという段になって考えたのは、今までに江戸時代の探偵物語というものが無い。大岡政談や板倉政談はむしろ裁判を主としたものであるから、新たに探偵を主としたものを書いてみたら面白かろうと思ったのです。もう一つには、現代の探偵物語を書くと、どうしても西洋の模倣に陥り易い虞《おそ》れがあるので、いっそ純江戸式に書いたならば一種の変
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