き》のひかりが洩れて、涼しい夜風がすだれ越しにそよそよ[#「そよそよ」に傍点]と枕元へ流れ込んで来る。
病気から例の神経衰弱を誘い出したのと、連日の暑気と、朝から晩まで寝て暮らしているのとで、毎晩どうも安らかに眠られない。今夜は涼しいから眠られるかと、十時頃から蚊帳《かや》を釣らせることにしたが、窓をしめ、雨戸をしめると、やはり蒸し暑い。十一時を過ぎ、十二時を過ぎて、電車の響きもやや絶えだえになった頃から少しうとうと[#「うとうと」に傍点]して、やがて再び眼をさますと、襟首には気味のわるい汗がにじんでいる。その汗を拭いて、床の上に起き直って団扇《うちわ》を使っていると、トタン葺《ぶ》きの家根に雨の音がはらはら[#「はらはら」に傍点]と聞える。そのあいだに鳥の声が近くきこえた。
それは雁《がん》の鳴く声で、お堀の水の上から聞えて来ることを私はすぐに知った。お堀に雁の群れが降りて来るのは珍しくないが、それには時候が早い。土用に入ってまだ幾日も過ぎないのに、雁の来るのはめずらしい。群れに離れた孤雁《こがん》が何かの途惑いをして迷って来たのかも知れないと思っていると、雁は雨のなかにふた声三
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