水も思ったほどに風流でない。狭くても窮屈でも、やはり据風呂を買おうかと思っている。そこでまた宿無しが一句うかんだ。

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宿無しが風呂桶を買ふ暑さ哉
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[#地付き](大正13・7「読売新聞」)
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郊外生活の一年


 震災以来、諸方を流転して、おちつかない日を送ること一年九ヵ月で、月並の文句ではあるが光陰流水の感に堪えない。大久保へ流れ込んで来たのは十三年の三月で、もう一年以上になる。東京市内に生まれて、東京市内に生活して、郊外というところは友人の家をたずねるか、あるいは春秋の天気のよい日に散歩にでも出かける所であると思っていた者が、測《はか》らずも郊外生活一年の経験を積むことを得たのは、これも震災の賜物《たまもの》と云っていいかも知れない。勿論、その賜物に対してかなりの高価を支払ってはいるが……。
 はじめてここへ移って来たのは、三月の春寒《はるさむ》がまだ去りやらない頃で、その月末の二十五、二十六、二十七の三日間は毎日つづいて寒い雨が降った。二十八日も朝から陰って、ときどきに雪を飛ばした。わたしの家の裏庭から北に見渡され
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