》とか金米糖《こんぺいとう》とかいうたぐいの干菓子《ひがし》をたずさえて来るので、それを半紙に乗せて盆の上に置き、ご退屈でございましょうからと云って、土産のしるしに差出すのである。
 貰った方でもそのままには済まされないから、返礼のしるしとして自分が携帯の菓子類を贈る。携帯品のない場合には、その土地の羊羹《ようかん》か煎餅《せんべい》のたぐいを買って贈る。それが初対面の時ばかりでなく、日を経ていよいよ懇意になるにしたがって、ときどきに鮓《すし》や果物などの遣り取りをすることもある。
 わたしが若いときに箱根に滞在していると、両隣りともに東京の下町《したまち》の家族づれで、ほとんど毎日のようにいろいろの物をくれるので、すこぶる有難迷惑に感じたことがある。交際好きの人になると、自分の両隣りばかりでなく、他の座敷の客といつの間にか懇意になって、そことも交際しているのがある。温泉場で懇意になったのが縁となって、帰京の後にも交際をつづけ、果ては縁組みをして親類になったなどというのもある。
 両隣りに挨拶するのも、土産ものを贈るのも、ここに長く滞在すると思えばこそで、一泊や二泊で立ち去ると思えば、
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