いたが、案内者も困った顔をして笑っているばかりで、詳しい説明をあたえない。こういう始末で、一進一止、捗《はかど》らないことおびただしく、われわれももううんざり[#「うんざり」に傍点]して来た。きょうの一行に加わって来た米国の兵士五、六人は、列車が停止するたびに車外に飛び出して路ばたの草花などを折っている。気の早い連中には実際我慢が出来ないであろうと思いやられた。
 窓をあけて見渡すと、何というところか知らないが、青い水が線路を斜めに横ぎって緩く流れている。その岸には二、三本の大きい柳の枝が眠そうに靡《なび》いている。線路に近いところには低い堤が蜿《のたく》ってつづいて、紅い雛芥子《ひなげし》と紫のブリュー・ベルとが一面に咲きみだれている。薄《すすき》のような青い葉も伸びている。米国の兵士はその青い葉をまいて笛のように吹いている。一丁も距《はな》れた畑のあいだに、三、四軒の人家の赤煉瓦が朝の日に暑そうに照らされている。
「八十五、六度だろう。」と、I君は云った。汽車が停まるとすこぶる暑い。われわれが暑がって顔の汗を拭いているのを、英国紳士は笑いながら眺めている。そうして、「このくらいなら
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