やまぶき》は一重が多いと見えて、みんな黒い実を着けていました。
よくは判りませんが、一旦くだってから更に半里ぐらいも登ったでしょう。坂路はよほど急になって、仰げば高い窟《いわや》の上に一本の大きな杉の木が見えました。これが中《なか》の嶽《たけ》の一本杉と云うので、われわれは既に第二の金洞山《きんとうざん》に踏み入っていたのです。金洞山は普通に中の嶽と云うそうです。ここから第三の金※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]山《きんけいざん》は真正面に見えるのだそうですが、この時に霧はいよいよ深くなって来て、正面の山どころか、自分が今立っている所の一本杉の大樹さえも、半分から上は消えるように隠れてしまって、枝をひろげた梢は雲に駕《の》る妖怪のように、不思議な形をしてただ朦朧《もうろう》と宙に泛《う》かんでいるばかりです。峰も谷も森も、もうなんにも見えなくなってしまいました。「山あひの霧はさながら海に似て」という古人の歌に嘘はありません。しかも浪かと誤まる松風の声は聞えませんでした。山の中は気味の悪いほどに静まり返って、ただ遠い谷底で水の音がひびくばかりです。ここでも鶯の声をときどきに聞き
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